高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

フェイクと本物の自然を足早に行き来する

高城未来研究所【Future Report】Vol.703(12月6日)より

今週は京都にいます。 

日本の紅葉の色彩が豊かな秘密は、落葉広葉樹の種類にあるといわれていて、13種しかないヨーロッパやカナダに対し、日本には26種もの落葉広葉樹があります。
赤や黄にくわえ、緑などさまざまな色を一度に楽しめるのは、他の国にはなかなかない日本の紅葉の大きな特徴で、さらに日本では神社仏閣や庭園といった景勝地が紅葉の名所になっているため、今週の京都はコンビニに入れないほど大賑わいです。

そこで、改めまして昨年2023年にインバウンド観光客の訪問が最も多かった都市を見ますと、ロンドンやパリといった常連観光都市と競って1位がイスタンブール、4位がアンタルヤとTOP5にトルコ2都市がランクインし、通貨安になった国に世界の観光客が訪れているのがよくわかります。

残念ながら京都も東京もトップ10にも入りませんが、円安と低物価によってインバウンド観光客が増えているのは間違いなく、逆に言えば通貨高になれば、観光特需が一気に冷え込んでしまいます。
現在、京都のホテル外国人比率は、史上最高の7割近くまで高まっているため価格も驚くほどに高騰していますが、円高になった途端、ある日突然インバウンドが去ってしまうのは容易に想定できる光景です。
これは、日本人がかつてサイパンやグアムにこぞって行きましたが、いまではすっかり訪れなくなった惨状と似ています。

1997年度には東京だけでなく大阪や名古屋、札幌、福岡からもサイパンまで直行便があり、年間約45万人の日本人が訪れていましたが、現在は7000人前後と観光客数95%減の状態が、もう何年も続いています。

また、通貨だけに限らず、物価も見なければなりません。
かつて多くの日本人はタイへ渡航していましたが、その魅力はバーツ安に限らず、安い物価も魅力的でした。
今週は1ドル150円前後を推移していますが、年5%の物価高を続けてきた米国の物価を換算すれば、現在の1ドル150円前後は1970年の「1ドル360円」より安い価値になりますので、多くの日本人にとって海外旅行は年々遠いものになりつつあります。
そのため、この15年以上「行ける時に行った方がいい」と何度もお伝えしてきました。
この思いは、いまも同じです。

パンデミックのフォローアップの意も含め、また観光利権を握っていた政治家の意向もあって、この数年、補助金含め日本の観光業は大いなるサポートを政府から受けてきました。
これが円高になっていつか逆転するのか、もしくはこのまま円安が続くのか、それとも上がったり下がったり翻弄されるのか。
これらの未来をすべての人たちは想定しておかねばなりません。

さて、京都の紅葉をSNSに投稿する人たちも少なくありませんが、今年はAIによって生成もしくは加工された画像を多く見かけるようになりました。
昨年までは、いかにもAIで生成された画像だとわかりましたが、今年は正直判別つかないものが多数あります。
紅葉の写真をよくよく見ると、「六重の塔」に色とりどりの紅葉が映えるような「ありえない京都」を見て、やっと気がつきます。
去年はAI臭い画像が目立ちましたが、今年はいよいよわからなくなってきました。

また、水道電気ガスがないアーユルヴェーダ施設から戻って、日本の食の悪さを実感する日々を過ごしています。
帰国後、それなりに優しくて良いものを食べているつもりですが、先日スリランカでお目にかかったアーユルヴェーダのドクター曰く、現代の食事は毒ばかりだから、無知なまま食べていたら時間をかけて殺される、と話していたのを思い出しました。
こちらは最近のAIと同じく、パッと見ると健康そうな食事に見えても、それが本当に健康的かすぐにはわかりません。
経済状況も同じで、一見好景気に見えても、実体経済はなかなか数字には出て来ないと、米国大統領選の結果を見ても実感するところです。

「自然風」を生成する為政者や企業の手立てを見抜けることができるのか?
この時代を生き抜くためには、そのような審美眼が自分を守るために求められているのではないか?

そんな想いを馳せながら、フェイクと本物の自然を足早に行き来する今週です。
紅葉列島では、冬が本格的にはじまります。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.703 12月6日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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